「医療をアルゴリズムで解く」UbieCTOが語る、エンジニアとして生きる意味
医療AIスタートアップUbieのCTOとして組織を牽引する谷口勇介さん。純粋な技術好きから経営者になるまでの葛藤と、エンジニアが社会変革の主役になれる時代について。
医療の非効率を直視できなかった。だからエンジニアとして解くことにした。谷口さんの言葉は、技術と使命感が交差するCTOの本質を示していた。
谷口勇介さんがUbieに入社した時、医療業界のシステムの遅れに驚いた。FAXで診療情報が送られ、紙カルテが倉庫に積まれ、患者が問診票を何度も手書きしている現実。これはソフトウェアエンジニアが解くべき課題だと確信した。
Ubieが開発するAI問診システムは、患者が症状を入力するだけで、医師が必要な情報を事前に把握できる仕組みだ。問診にかかる時間が短縮されるだけでなく、見落としが減り、診療の質が上がる。
CTOになった今、谷口さんが一番考えているのは医療データのセキュリティをどう担保しながら価値を引き出すかという問いだ。
「医療というフィールドは、エンジニアにとって未踏の地だ。だからこそ、やりがいがある。」
エンジニアがCTOになる過程で、最も大変だったことは何ですか?
コードを書く時間が減ることへの葛藤です。CTOになると、採用・組織設計・技術戦略のコミュニケーションに時間を取られる。最初は喪失感がありました。
今は、コードを書く代わりに、コードを書く人を増やす仕事をしていると考え方を変えました。
医療AIという領域で、エンジニアとして特に難しい点は何ですか?
精度と説明可能性のトレードオフです。医療AIは精度が高くても、なぜその判断をしたかを医師に説明できなければ信頼されない。
もう一つは法規制との戦いです。医療機器としての承認を取るプロセスは、通常のソフトウェアリリースとは全く違う。
スタートアップで技術力を高め続けるための組織設計を教えてください。
技術的負債を返す時間を意図的に確保することです。Ubieでは、スプリントの20%をリファクタリングと技術投資に充てるルールを設けています。
もう一つは技術選定の民主化です。CTOが全部決めるのではなく、現場のエンジニアが提案して議論する文化を作っています。
メンターとして、どんなエンジニアの相談に来てほしいですか?
技術だけ磨いてきたが、次のキャリアをどう考えればいいかという方に特に来てほしいです。シニアエンジニアからEMになる道、もしくはICとして極めていく道。両方に価値があります。
医療・ヘルスケア分野に興味があるエンジニアも大歓迎です。
10年後のエンジニアという職業は、どう変わると思いますか?
AIとの協働が当たり前になっていると思います。コーディングの一部はAIが担う。でも、何を作るべきかを決め、ユーザーの感情を理解し、倫理的な判断をするのは人間でなければならない。
エンジニアの価値はコードを書く速さではなく何を解くべきかを判断する力に移行していく。
医療を技術で解くという言葉の重みを、谷口さんは一言も大げさに語らなかった。その静けさが、使命感の深さを証明していた。
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