「建材業界にDXを」Archi Village CTOが語る、ConTechのリアルと次の打ち手
建設業界のサプライチェーンに眠るアナログな課題。エンジニア出身のCTOがその解決に人生をかける理由とは。
建材業界という一見地味に見えるマーケットに、巨大なDXの機会を見出したCTOの話は説得力があった。
建設業界は日本のGDPの約6%を占める巨大産業でありながら、サプライチェーンの多くが今もFAXと電話でまわっている。建材メーカー、商社、工務店の間で交わされる発注・在庫確認・納期調整は、属人的なやりとりに依存しており、デジタル化の余地は計り知れない。Archi Villageはその非効率に正面から向き合い、建材流通のプラットフォームを開発している。
CTOの桑原誠一氏は、SIer出身のエンジニアだ。前職では大手ゼネコン向けの基幹システム開発に携わり、現場の課題を肌で知っていた。「図面と伝票のやりとりがいまだに手作業なんです。作業員が現場で建材を注文するとき、電話でカタログを読み上げて型番を確認している。2020年代の光景とは思えなかった」と桑原氏は振り返る。
Archi Villageへの参画は、そのリアルな課題感がきっかけだった。建材流通にSaaSを持ち込むことは技術的にも商習慣的にも挑戦の連続だが、「誰かがやらなければ業界は変わらない」という確信が桑原氏の原動力になっている。今回はCTOとして技術戦略を担う桑原氏に、ConTechの今と未来を聞いた。
建材業界のDX、現状はどこまで進んでいますか?
率直に言うと、まだ入口の段階です。受発注のデジタル化すら普及しきっていない企業が多く、うちのプロダクトを入れると『こんなに楽になるんですか』と驚かれることがまだあります。ただ、コロナ禍を経て現場の意識は確実に変わりました。FAXが使えなくなるリスクを経験した企業は、デジタル化に本気になっています。
DXへの抵抗感が強いのは、過去に失敗体験がある企業が多いからでもあります。高額なシステムを入れたのに使いこなせなかった、という話はよく聞きます。私たちは導入後の定着支援を重視していて、CSチームがオンボーディングから丁寧に伴走するようにしています。
エンジニアとして、このプロダクト開発のどこが技術的に面白いですか?
業界特有のデータ構造が面白いですね。建材は品番体系が複雑で、同じ製品でもメーカーごとに型番が違う。それを正規化してマスタ管理する仕組みを作るのは、技術的なパズルとして純粋に楽しいです。OCRや機械学習も組み合わせて、紙の伝票を自動で取り込む機能を開発中です。
スケールの問題もあります。建材の発注ピークは春先と秋口に集中するので、負荷に耐えるインフラ設計が必要です。小さいチームで本番環境を安定させながら新機能を出し続けるのは、エンジニアとして腕が鳴ります。
採用で重視していることを教えてください。
業界への好奇心があるかどうか、まずそこを見ます。建材や建設の知識がゼロでも構いません。ただ、現場に足を運んで自分の目で確かめようとする姿勢があるかどうかは重要です。ユーザーのリアルを知らずに良いプロダクトは作れないと思っているので。
技術的には、特定の言語やフレームワークへのこだわりより、問題解決の筋道を自分で立てられる力を重視しています。小さなチームなので、曖昧な仕様から要件を整理して実装まで持っていける人と一緒に仕事したいです。
ConTechという分野の将来性をどう見ていますか?
非常に大きいと思っています。建設業は2024年問題で時間外労働の上限規制がかかり、業界全体が生産性向上を迫られています。デジタル化が遅れていた分、ここから伸びる余地は大きい。欧米のConTechスタートアップはすでに数千億円規模の評価を受けているものもあり、日本はようやく走り始めた段階です。
建材流通を起点にして、設計・施工・メンテナンスまでのデータを一気通貫でつなぐのが私たちの構想です。建物一棟のライフサイクルを通じてデータが活きるプラットフォームになれば、単なる受発注ツールとは違う価値が生まれると考えています。
転職を検討しているエンジニアへ、メッセージをお願いします。
BtoBのSaaSというと地味に聞こえるかもしれませんが、このドメインは面白いですよ。ユーザーが業界のプロである分、プロダクトへのフィードバックが具体的で鋭い。それに応えてプロダクトが進化する手応えは、大きな会社では味わいにくいと思います。
フェーズとしてはプロダクトの輪郭が見えてきたところで、これからスケールさせていく時期です。エンジニアとしてのキャリアで一度は、自分の実装が業界の標準になる経験をしてみたい人に来てほしいです。
「建物が安全になる」という社会的インパクトを、エンジニアが技術で直接つくっている現場があることを知ってほしい。